共有持分の競売とは?競売になる3つのケースと回避策
「共有している実家が競売にかけられるかもしれない」「共同住宅ローンの返済が苦しく、共有名義の家がどうなるのか心配」と不安を抱えていないでしょうか。
結論から言うと、共有不動産は「共有物分割請求」「抵当権の実行」「差し押さえ」の3つのケースで競売になる可能性があります。いずれの場合も、売却価格や時期を所有者が決めることはできず、市場価格より安く売られやすい点に注意が必要です。
この記事では、共有持分が競売になるケースから、競売手続きの流れ、デメリット、競売を回避する方法までをわかりやすく解説します。
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共有持分の競売とは?
競売とは、裁判所が不動産を強制的に売却し、その代金を債権者や共有者に分配する手続きです。所有者の意思とは関係なく進められ、売却価格や引き渡しの時期を所有者が選ぶことはできません。
共有不動産の競売には、「不動産全体が競売にかけられる場合」と「特定の共有者の持分だけが競売にかけられる場合」の2つのパターンがあります。どちらになるかは、競売に至ったきっかけによって決まります。
| 項目 | 不動産全体の競売 | 持分のみの競売 |
|---|---|---|
| 競売の対象 | 土地・建物などの不動産全体 | 特定の共有者の持分だけ |
| 主なきっかけ | 共有物分割請求、不動産全体に設定された抵当権の実行 | 共有者個人の借金・税金の滞納、持分のみに設定された抵当権の実行 |
| 落札後の状態 | 落札者が単独で所有し、共有関係はなくなる | 落札者が新たな共有者になり、共有関係は続く |
共有持分という権利そのものの仕組みを詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
仲介や買取による一般的な売却とは異なり、競売では条件を交渉する余地がほとんどありません。次章では、どのような場合に競売へ進むのかを具体的に見ていきましょう。
共有持分が競売になる3つのケース
共有不動産が競売にかけられる主なケースは、次の3つです。きっかけによって、競売の対象が不動産全体になるか、持分だけになるかが異なります。
- 共有物分割請求で換価分割が命じられた場合(不動産全体)
- 住宅ローンなどの抵当権が実行された場合(主に不動産全体)
- 借金や税金の滞納で差し押さえられた場合(滞納した共有者の持分)
以下で詳しく解説します。
ケース1. 共有物分割請求で換価分割が命じられた場合
共有者間の話し合いがまとまらず、共有物分割請求訴訟(共有関係の解消を裁判所に求める訴訟)に発展すると、裁判所が競売を命じることがあります。自分が請求した側であっても、請求された側であっても、競売になれば不動産全体が売却される点は変わりません。
民法258条では、不動産を物理的に分ける「現物分割」や、共有者の一人が他の共有者の持分を取得して金銭を支払う方法(いわゆる「賠償分割」)などによって分割できない場合、または分割によって価値が著しく下がるおそれがある場合に、裁判所が競売を命じられると定めています。これを「換価分割」と呼びます。
実務上、裁判所はまず賠償分割などで解決できないかを検討し、共有者に買い取る資金がない場合や、意見の対立が激しい場合に競売を選ぶ傾向があります。判決にもとづく競売は「形式的競売」と呼ばれ、不動産全体が売却されたのち、代金は持分割合に応じて共有者に分配されます。
共有物分割請求の要件や訴訟の流れは、以下の記事で詳しく解説しています。
ケース2. 住宅ローンなどの抵当権が実行された場合
住宅ローンの返済が滞ると、金融機関が抵当権(返済されない場合に不動産を競売にかけ、その代金から優先的に回収できる権利)を実行し、裁判所に競売を申し立てます。この手続きを「担保不動産競売」といいます。
出典元:裁判所
注意したいのは、住宅ローンでは不動産全体に抵当権が設定されるのが一般的である点です。夫婦がそれぞれ借り入れるペアローンの場合も、夫だけがローンを組み、妻が自分の持分を担保として提供する「担保提供者」になっている場合も、返済が滞れば、夫婦双方の持分を含めた不動産全体が競売の対象になります。自分の持分だけを競売から外すことはできません。
離婚後もローンや共有名義が残っている場合の注意点は、以下の記事をご覧ください。
ケース3. 借金や税金の滞納で差し押さえられた場合
共有者が個人的な借金を返済しない場合、債権者は裁判所の手続きを経て、その共有者の持分だけを差し押さえ、競売にかけることができます。これを「強制競売」といいます。
自分が滞納すれば自分の持分が、他の共有者が滞納すればその共有者の持分が競売の対象になります。他の共有者の借金で自分の持分まで差し押さえられることは原則ありませんが、自分がその借金の連帯保証人になっている場合は例外です。
強制競売を申し立てるには、確定判決などの「債務名義」(強制執行を認める公的な文書)が必要なため、借金の滞納からすぐに競売へ進むわけではありませんが、督促を放置し続けると現実的なリスクになります。
また、税金を滞納した場合は、税務署や自治体が持分を差し押さえ、国税徴収法などにもとづく「公売」(行政機関が行う競売に近い売却手続き)にかけることもあります。
とくに固定資産税は、共有者全員が連帯して納める義務(連帯納税義務)を負うため、一人が滞納すると、きちんと負担している共有者の財産まで差し押さえの対象になり得ます(地方税法10条の2)。
固定資産税をめぐるリスクは、以下の記事で詳しく解説しています。
共有持分が競売になるまでの流れ
競売は、申し立てから開札、代金の納付と配当まで、裁判所の主導で段階的に進められます。一般的には、申し立てから売却が決まるまで半年〜1年程度かかるのが目安です。
ここでは、共有物分割請求による競売・抵当権の実行・強制競売に共通する、競売手続きそのものの流れを4つのステップで紹介します。
ステップ1:競売の申し立てと開始決定
まず、金融機関などの債権者や、共有物分割請求の判決を得た共有者が、不動産の所在地を管轄する地方裁判所に競売を申し立てます。
裁判所が申し立てを認めると「競売開始決定」が出され、不動産の登記簿に差し押さえの登記がされます。同時に、所有者のもとには裁判所から開始決定の通知が届きます。差し押さえの登記がされたあとは、不動産を自由に売却することが難しくなるため、この通知が対応を考える重要なタイミングになります。
ステップ2:現況調査と売却基準価額の決定
競売開始決定のあと、裁判所の執行官が物件を訪れ、建物の状態や占有者の有無などを調べる「現況調査」を行います。あわせて、評価人(主に不動産鑑定士)が物件の価値を評価します。
裁判所は、この評価をもとに「売却基準価額」(競売で売却する際の基準となる価格)を決定します。入札できる最低額である「買受可能価額」は、売却基準価額から2割を差し引いた金額と定められています(民事執行法60条)。
ステップ3:期間入札と開札
売却基準価額が決まると、物件の写真や評価書などの情報が、裁判所の不動産競売物件情報サイト「BIT」などで公開され、定められた期間内に入札を受け付けます。誰でも閲覧できるため、競売にかけられた事実が近隣や知人に知られる可能性もあります。期間が終わると開札が行われ、最も高い金額を提示した人が「最高価買受申出人」(事実上の落札者)になります。
持分のみの競売は、落札しても不動産を自由に使えないことから買い手がつきにくい傾向にあります。入札がなかった場合は、先着順で買受人を決める「特別売却」や、条件を見直したうえでの再度の入札に進みます。
ステップ4:代金の納付と配当
裁判所が売却を許可し、落札者が代金を納めると、所有権が落札者に移ります。売却代金は、手続きにかかった費用や抵当権者などへの返済に充てられ、残りがあれば共有者に分配されます。この分配を「配当」といいます。
落札後も元の所有者が住み続けている場合、落札者は裁判所に「引渡命令」(物件の明け渡しを命じる裁判所の決定)を申し立てられます。それでも退去しなければ、強制執行によって明け渡しを求められることになります。
共有持分が競売になる4つのデメリット
競売は、所有者にとって不利な点が多い手続きです。共有者の立場から押さえておきたいデメリットは、次の4つです。
デメリット1. 市場価格より安く売却される
競売物件は、事前に室内を見られない、引き渡しが保証されていない、不具合があっても売主の責任を問えないなど、買い手にとってのリスクが大きい物件です。そのため、売却基準価額はこうしたリスクを踏まえて低めに評価されるうえ、売却基準価額の80%で受け付けられます。結果として、一般的な市場での売却に比べて低い価格で売却される可能性があります。
持分のみの競売では、落札しても他の共有者がいるため不動産を自由に利用できず、価格はさらに下がりやすくなります。共有持分を通常の方法で売却した場合の価格の目安は、以下の記事を参考にしてください。
デメリット2. 見知らぬ第三者が共有者になる
持分のみが競売にかけられた場合、投資家や不動産業者などの第三者が落札し、新たな共有者として加わります。残された共有者は、面識のない相手と不動産を共有し続けなければなりません。
新しい共有者からは、持分の買い取りや不動産全体の売却を持ちかけられたり、住んでいる共有者に対して賃料相当額を請求されたりすることがあります。
話し合いがまとまらなければ、共有物分割請求を起こされ、最終的に不動産全体が競売になるおそれもあります。業者が共有者になった場合に起こりやすいトラブルは、以下の記事で詳しく解説しています。
デメリット3. 住んでいる家から退去を求められる
不動産全体が競売で売却されると、所有権は落札者に移るため、住み続けている共有者も家を明け渡さなければなりません。
任意の売却であれば、引越し先を決めてから引き渡すなど、時期を調整できます。しかし競売では、代金が納付された時点で所有権が移り、前述の引渡命令によって退去を求められるため、引越しの時期を自分で選べません。応じなければ強制執行に至り、家財の搬出まで行われることもあります。
なお、持分のみが競売にかけられた場合、落札者は新たな共有者になるだけで、不動産全体の所有権を得るわけではありません。共有者には持分に応じて不動産全体を使用する権利があるため(民法249条)、住んでいる共有者がすぐに退去を求められることはありません。
ただし、前述のとおり賃料相当額を請求されたり、共有物分割請求を起こされたりした結果、不動産全体が競売になれば、退去は避けられません。
デメリット4. 売却後も住宅ローンの残債が残る
競売の売却代金で住宅ローンを完済できなかった場合、残った借金は競売後も返済し続けなければなりません。家を失ったうえに返済だけが続くという、経済的にも精神的にも負担の大きい状況に陥ります。
また、ペアローンや連帯債務・連帯保証(ローンの返済義務を一緒に負う契約)で借りている場合は、夫婦それぞれに残債の請求が及びます。競売は市場価格より安く売却されやすいぶん、残債も多く残りやすい点に注意しましょう。こうした事態を避けるためには、競売が始まる前の対応が欠かせません。
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共有持分の競売を回避する4つの方法
競売を避けるためには、競売開始決定が出る前に動き出すことが最も重要です。開始決定のあとは差し押さえの登記がされ、取れる選択肢が限られてしまいます。状況に応じて、次の4つの方法を検討しましょう。
| 方法 | 向いているケース | 他の共有者の同意 |
| 返済の相談や肩代わりで滞納を解消する | 滞納が始まったばかりで、競売開始決定前 | 不要 |
| 任意売却で不動産全体を売却する | ローンの滞納が続き、家を手放す必要がある | 共有者全員の同意が必要 |
| 他の共有者に持分を買い取ってもらう | 共有者に買い取る資金がある | 買い取る共有者の合意が必要 |
| 自分の持分だけを専門業者に売却する | 共有者の協力が得られない・早く手放したい | 不要 |
以下で解説します。
方法1. 返済の相談や肩代わりで滞納を解消する
競売のきっかけがローンや借金の滞納であれば、滞納そのものを解消することで競売を防げます。方法は、主に次の2つです。
- 自分が滞納している場合は、金融機関に返済方法を相談する:返済期間の延長や、一定期間の返済額の軽減など、返済方法の変更に応じてもらえる場合がある
- 他の共有者が滞納している場合は、滞納分を肩代わりする:自分の持分や住まいを守るために、滞納している共有者に代わって返済する
返済方法の変更は、滞納が続いて金融機関から一括返済を求められると難しくなるため、滞納が始まった直後までに相談することが大切です。
他の共有者が滞納している場合、競売によって自分の権利に影響が及ぶおそれがある共有者は、状況によっては滞納分を代わりに返済できる場合があります。第三者による弁済については民法474条に規定がありますが、債務の内容や契約によって扱いが異なるため、金融機関などへの確認が必要です。
方法2. 任意売却で不動産全体を売却する
任意売却とは、金融機関の同意を得たうえで、抵当権が付いたままの不動産を一般の市場で売却する方法です。売却代金でローンを完済できない場合でも、金融機関が同意すれば抵当権を外して売却できます。
競売より高い価格で売れやすく、引越しの時期も買主と調整しやすいのがメリットです。ただし、不動産全体を売却することになるため、共有者全員の同意が必要になります。共有者の一人でも反対していたり、連絡が取れなかったりする場合は、この方法を選べません。また、競売開始決定が出たあとでも任意売却に切り替えられる場合はありますが、競売手続きが進むほど時間的な余裕がなくなり、債権者との調整も難しくなります。
方法3. 他の共有者に持分を買い取ってもらう
共有物分割請求を起こされている場合や、共有者の一人が借金で困っている場合は、共有者どうしで持分を売買し、単独名義にまとめることで競売を避けられます。たとえば、滞納している共有者の持分を他の共有者が買い取れば、その持分が差し押さえられて第三者に渡る事態を防げます。
一方で、買い取る側にはまとまった資金が必要です。住宅ローンが残っている場合は、金融機関との調整も欠かせません。単独名義に変更する手続きや費用は、以下の記事で詳しく解説しています。
方法4. 自分の持分だけを専門業者に売却する
共有者の協力が得られない場合や、共有者と連絡が取れない場合でも、自分の持分だけであれば単独で売却できます。民法206条により、各共有者は自分の持分を自由に処分できると定められているためです。
競売が始まる前に持分を手放しておけば、競売による価格の下落や、見知らぬ第三者との共有関係に巻き込まれるリスクを避けられます。他の共有者と交渉する必要がなく、条件が合えば短期間で現金化できる点も、この方法ならではの利点です。
共有物分割請求を起こされそうな場合や、共有者の滞納で将来の競売が心配な場合にも検討しやすい選択肢といえます。持分を売却した場合に他の共有者や不動産がどうなるかは、以下の記事をご覧ください。
持分だけを購入する一般の買主はほとんどいないため、売却先は共有持分を専門に扱う買取業者が中心です。信頼できる業者の選び方は、以下の記事を参考にしてください。
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共有持分の競売に関するよくある質問
ここまで、共有持分が競売になるケースや流れ、デメリット、回避する方法を解説してきました。最後に、本文で触れきれなかった疑問にお答えします。
Q.抵当権が付いた共有持分はどこまで競売になる?
競売の対象は、抵当権が設定されている範囲によって決まります。抵当権は不動産全体だけでなく、特定の共有者の持分だけに設定することも可能です。
| 抵当権の設定範囲 | 競売の対象 | 他の共有者への影響 |
| 不動産全体 | 不動産全体 | 担保提供者として、自分の持分も失う |
| 特定の持分のみ | その持分だけ | 落札した第三者と共有することになる |
自分の不動産にどのような抵当権が設定されているかは、登記事項証明書(登記簿謄本)の「権利部(乙区)」で確認できます。
Q.共有者が自ら競売に参加して落札できる?
借金を返済できずに競売にかけられた本人(債務者)は入札できませんが、他の共有者は入札に参加して落札できます(民事執行法68条)。落札すれば、不動産全体や競売にかけられた持分を取得し、単独所有にまとめることも可能です。ただし、入札時の保証金や落札後の代金を用意しなければなりません。
Q.競売物件の共有持分は買っても大丈夫?
競売物件として出ている共有持分は、相場より安く購入できる可能性があります。一方で、落札しても他の共有者がいるため、不動産を自由に利用できないリスクがある点に注意が必要です。主な注意点は、次のとおりです。
- 住む・貸すなどの利用には、他の共有者との話し合いが必要になる
- 話し合いがまとまらなければ、共有物分割請求を起こす必要がある
- 入札前に室内を見られず、物件の状態を確認しにくい
- 住宅ローンを利用して購入することが難しい
自分で住む目的で一般の方が購入する場合は、慎重に検討しましょう。
共有持分の競売は持分くんに早めの相談を
共有不動産は、共有物分割請求・抵当権の実行・差し押さえの3つのケースで競売になる可能性があります。競売では市場価格より安く売却されるうえ、見知らぬ第三者が共有者になる、退去を求められる、ローンの残債が残るなど、所有者にとって不利な点が多くあります。
一方で、競売開始決定が出る前であれば、金融機関への相談や任意売却、共有者間での持分の買い取り、自分の持分だけの売却など、取れる選択肢は多く残されています。共有持分の売却の全体像を知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
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