共有名義の固定資産税は誰が払う?負担割合と払わない共有者への対処法
「固定資産税の納税通知書が自分にだけ届き、毎年全額を払っている」「ほかの共有者が負担分を払ってくれない」と悩んでいないでしょうか。
結論から言うと、共有名義の不動産にかかる固定資産税は、共有者全員が税額の全額について納める義務を負います。そのうえで、実際の負担は持分割合に応じて共有者どうしで精算するのが基本です。
この記事では、固定資産税の納付の仕組みや手続きをはじめ、共有者が亡くなった場合や支払いを拒む共有者がいる場合の対応、負担そのものから抜け出す方法までを解説します。
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共有名義の固定資産税は誰が払う?
共有名義の固定資産税は、共有者全員に支払い義務があります。ただし、市区町村から届く納税通知書は代表者1人宛てで、記載されている税額も不動産全体の金額です。そのため「誰がいくら払うのか」は、共有者どうしで決めて精算しなければなりません。まずは、納税の仕組みと負担割合の考え方を確認しておきましょう。
共有名義という所有形態そのものを詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
共有者全員が連帯納税義務を負う
固定資産税は、毎年1月1日時点で土地や建物を所有している人に対し、市区町村(東京23区は東京都)が課す税金です。不動産が共有名義の場合、共有者全員が税額の全額について連帯して納める義務を負います。これを「連帯納税義務」といい、地方税法10条の2に定められています。
たとえば年税額が12万円で、持分が2分の1ずつの場合でも、各共有者は「6万円だけ納めればよい」わけではありません。市区町村は共有者の誰に対しても12万円全額を請求できるため、ほかの共有者が払わなければ、残りを自分が負担せざるを得なくなる可能性があります。
納税通知書は代表者1人に届く
共有名義の不動産の納税通知書は、共有者ごとに届くのではなく、共有者の中から選ばれた「共有代表者」1人宛てに送付されます。代表者を届け出ていない場合は、市区町村が次のような基準で決めるのが一般的です。
- 不動産の所在地に住んでいる人
- その市区町村内に住んでいる人
- 持分割合が大きい人
- 登記簿に先に記載されている人
基準や優先順位は自治体によって異なります。口座振替を利用する場合も、原則として代表者名義の口座から引き落とされます。なお、自分だけの名義の不動産を別に所有している場合は、共有名義の分とは別に納税通知書が届きます。
負担割合は持分に応じて決まる
連帯納税義務は市区町村に対する義務であり、共有者どうしの負担割合は持分に応じて決めるのが原則です。民法253条1項は、各共有者が持分に応じて管理の費用を支払い、その他の負担を負うと定めています。年税額12万円の場合、各共有者の負担額は次のとおりです。
| 持分割合 | 各共有者の負担額 |
|---|---|
| 2分の1ずつ(2人) | 6万円ずつ |
| 3分の1ずつ(3人) | 4万円ずつ |
| 3分の2と3分の1(2人) | 8万円と4万円 |
共有者全員が合意していれば、実際に住んでいる人が多めに負担するなど、持分とは異なる割合で分担することも可能です。
共有名義でも税額は安くならない
「共有名義にすれば1人あたりの税額が下がり、得になる」という考え方もありますが、固定資産税の総額は変わりません。固定資産税は不動産ごとの評価額をもとに計算されるため、名義を分けても不動産全体の税額は同じです。
土地30万円・家屋20万円未満であれば課税されない「免税点」も、共有者ごとの持分ではなく、共有名義の不動産全体の課税標準額(税額を計算する基礎となる金額)で判定されます。一方で、住宅用地の特例(住宅が建つ土地の課税標準額を最大6分の1に減らす制度)などの軽減措置は、要件を満たせば共有名義でも単独名義と同じように適用されます。
共有者が死亡した場合の固定資産税の手続きで重要なこと
共有者が亡くなっても、その持分にかかる固定資産税の納税義務は消えません。亡くなった共有者の持分は相続人に引き継がれるため、誰が納税するのかを早めに確認しておく必要があります。ここでは、固定資産税の手続きで押さえておきたい3つのポイントに絞って解説します。
相続手続きの全体像を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
相続人が納税義務を引き継ぐ
亡くなった共有者の持分は相続人に引き継がれ、固定資産税の納税義務も相続人が負います。固定資産税は1月1日時点の所有者に1年分が課税されるため、年の途中で亡くなった場合は、その年度の未納分を相続人が納めることになります。
遺産分割が終わるまでは、相続人全員がその持分を共有している状態です。そのため、もとの共有者と相続人全員が連帯納税義務を負い、納税義務者の人数が一時的に増えます。亡くなった共有者が代表者だった場合は、新しい代表者を決めて届け出ておきましょう。
相続登記までは現所有者を申告する
固定資産税は原則として登記簿上の所有者に課税されますが、所有者が1月1日より前に亡くなっている場合は例外です。相続登記が済んでおらず登記簿上は亡くなった人の名義のままでも、その時点で実際に不動産を所有している相続人(現所有者)が納税義務者になります(地方税法343条2項)。
そのため市区町村は、現所有者に対し、氏名や住所などを申告させることができます(地方税法384条の3)。申告の期限や方法は各自治体の条例で定められているため、自分の住所地ではなく、不動産がある市区町村の案内を確認してください。
また、2024年4月から相続登記が義務化され、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければなりません。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になる可能性があります。
相続放棄した人は納税義務を負わない
相続放棄をした人は、初めから相続人ではなかったものとみなされます(民法939条)。そのため、亡くなった共有者の持分にかかる固定資産税を負担する必要はありません。ただし、免れるのは亡くなった人から引き継ぐはずだった持分についての負担だけです。もともと自分が持っている持分の固定資産税は、引き続き納めなければなりません。
なお、相続放棄は相続の開始を知った日から原則3ヶ月以内に、家庭裁判所へ申述する必要があります。放棄の前に相続財産を処分すると、相続を認めた(単純承認)とみなされ、放棄できなくなるおそれもあるため、相続財産の扱いに迷う場合は司法書士や弁護士に相談しましょう。
出典元:相続の放棄の申述_裁判所
共有者が固定資産税を払わない場合のリスク
支払いを拒む共有者がいても、「自分の分は払っているから関係ない」とはいえません。連帯納税義務がある以上、滞納の影響はほかの共有者にも及びます。放置した場合に起こり得るリスクを確認しておきましょう。
共有者全員に督促状が届き延滞金が加算される
納期限までに固定資産税が納められないと、共有者全員に対して納期限後20日以内に督促状が送られてきます(地方税法371条)。さらに、納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、延滞金が加算されます。令和8年中の延滞金の割合は次のとおりです。
| 期間 | 延滞金の割合 |
| 納期限の翌日から1ヶ月以内 | 年2.8% |
| 納期限の翌日から1ヶ月を経過した日以降 | 年9.1% |
督促状が届いても納付しなければ、財産の調査や差押えといった「滞納処分」(税金を強制的に徴収する手続き)に進みます。
払っている共有者の財産も差し押さえられる
督促状を発した日から10日を過ぎても完納されない場合、市区町村は滞納者の財産を差し押さえなければならないと定められています(地方税法373条)。共有名義の不動産では共有者全員が連帯納税義務を負うため、差押えの対象は払っていない共有者の財産に限られません。
負担分をきちんと代表者に渡している共有者であっても、預貯金や給与、ほかに所有する不動産などが差し押さえられる可能性があります。「自分の持分の分は払っているから大丈夫」とはならない点に注意が必要です。
立て替えの負担が一部の共有者に偏る
差押えを避けるには、誰かが不足分を納めるしかありません。そのため、払わない共有者がいると、代表者やまじめに払っている共有者が全額を立て替え続ける状況に陥りがちです。
とくに、共有者が遠方に住んでいる、長年連絡を取っていない、相続で面識のない親族が共有者になったといったケースでは、立て替えた分の回収が難しくなります。1年分の金額は小さくても毎年積み重なるため、負担は年々大きくなり、共有者どうしの関係もこじれやすくなります。
なお、立て替えた固定資産税は、ほかの共有者に持分割合に応じた金額を請求できます(求償権の行使)。固定資産税は、各共有者が持分に応じて負担すると定めた民法253条1項の「共有物に関する負担」にあたるためです。たとえば3人で3分の1ずつ共有している場合、全額を納めた共有者は、残りの2人にそれぞれ3分の1ずつ請求できます。具体的な請求の進め方は、後述の「立て替えた分を他の共有者に請求する」で解説します。
肩代わり分が贈与とみなされる
ほかの共有者の負担分を肩代わりし、精算しないまま放置していると、その金額が贈与とみなされる可能性があります。対価を受け取らずに他人の債務を弁済し、相手に利益を与えた場合、相手はその利益を贈与により取得したものとみなされるためです(相続税法8条)。
贈与税は、1年間に受け取った財産の合計が110万円を超えると課税されます。固定資産税の肩代わりだけで基礎控除を超えるケースは多くないものの、ほかの贈与と合算すると超えることもあります。夫婦間で家計の一部として負担している場合など、状況によって扱いが異なるため、判断に迷うときは税理士に確認しましょう。
共有名義の固定資産税の負担から抜け出す5つの方法
固定資産税をめぐる負担やトラブルを解消するには、共有関係を続けながらルールを整える方法と、共有状態そのものを解消する方法があります。状況に合わせて、次の5つの方法を検討しましょう。
方法1. 立て替えた分を他の共有者に請求する
全額を立て替えた場合は、ほかの共有者に持分相当額を請求できます。この権利を「求償権」といい、連帯して債務を負う人の一人が全額を弁済したときに、ほかの債務者へ負担分を請求できると定めた民法442条が根拠とされています。請求は、一般的に次の順序で進めます。
- 話し合いや書面で支払いを求める
- 内容証明郵便で請求する
- 簡易裁判所に支払督促や少額訴訟(60万円以下の金銭の支払いを求める訴訟)を申し立てる
さらに、1年以上負担分を払わない共有者に対しては、相当の償金を支払うことで、その人の持分を取得できる制度もあります(民法253条2項)。
方法2. 負担ルールを書面で取り決める
共有関係を続ける場合は、固定資産税の負担ルールを書面に残しておくと、将来のトラブルを防げます。合意書には、主に次の項目を盛り込みましょう。
- 各共有者の負担割合
- 代表者と、精算の時期・方法
- 支払いが遅れた場合の対応
- 共有者が亡くなった場合の代表者の決め方
口約束だけでは、年月がたつうちに共有者の認識がずれていきます。共有者全員が署名・押印した書面があれば、立て替えた分を請求する際の証拠にもなります。
方法3. 共有者から持分を買い取る
ほかの共有者の持分をすべて買い取って単独名義にすれば、固定資産税の精算や立て替えの問題は生じません。納税通知書も自分宛てに届くようになり、支払いの判断を一人で下せます。
ただし、持分の時価に見合った買取資金に加え、登録免許税や不動産取得税などの費用もかかります。相手が売却に応じなければ進められない点にも注意しましょう。費用や手続きの詳細は、以下の記事で解説しています。
方法4. 自分の持分だけを売却する
共有持分は民法206条により、各共有者が自由に処分できる財産と定められています。そのため、自分の持分だけであれば、ほかの共有者の同意を得ずに売却できます。売却して共有者でなくなれば、翌年度以降の固定資産税を負担する必要もありません。
固定資産税は1月1日時点の所有者に1年分が課税されるため、年内に売却と登記を済ませれば、翌年度分の負担を避けられます。年の途中で売却する場合も、売却後の期間に相当する税額を買主との間で精算できることがあります。共有者との話し合いが難しいときにも選びやすい方法です。
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方法5. 共有物分割請求で共有状態を解消する
共有者どうしの話し合いがまとまらない場合は、裁判所に「共有物分割請求」を申し立て、共有状態の解消を求める方法があります(民法258条)。裁判所の判断により、不動産を物理的に分ける、一人が取得してほかの共有者に代金を支払う、競売にかけて代金を分けるといった方法で共有関係が解消されます。
ただし、解決までに1年以上かかることもあり、弁護士費用などの負担も重くなりがちです。望まない形で決着する可能性もあるため、最終手段として考えておきましょう。詳しい流れや費用は、以下の記事で解説しています。
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共有名義の固定資産税は、共有者全員が全額について連帯納税義務を負い、納税通知書は代表者に届きます。実際の負担は持分割合で精算するのが基本ですが、支払いを拒む共有者がいると、差押えや立て替えの負担がまじめに払っている共有者にまで及びかねません。共有者の死亡や離婚をきっかけに負担が偏るケースもあるため、精算のルールを整えるか、持分の売却などで共有関係から抜け出すかを早めに検討しておくことが大切です。
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