共有持分

共有持分の放棄とは?費用・手続きと売却との違い

他の共有者との関係に悩んでおり、「対価はいらないので、自分の持分だけでも手放したい」と考えていないでしょうか。

結論から言うと、共有持分は「放棄」という方法で手放すこともできます。ただし、放棄は対価を受け取れない手続きであるうえ、他の共有者に思わぬ税負担をかけてしまう場合もあります。

この記事では、共有持分放棄の仕組み・手続き・費用・注意点を解説したうえで、売却との違いについても比較して紹介します。

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共有持分の放棄とは

共有持分の放棄とは、他の共有者の同意を得ずに、無償で自分の意思だけで持分を手放せる制度です。共有持分は民法206条により各共有者が単独で処分できる財産と定められており、他の共有者の同意を得ずに、売却だけでなく「放棄」という手放し方も選べます。 

「買い手が見つかりそうにない」「まとまった手続きの手間をかけたくない」といった理由から、放棄という方法にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。

共有持分の放棄は、民法255条を根拠とする単独行為です。他の共有者の承諾を得る必要はなく、放棄する意思表示のみで法律上の効力が生じ、放棄した持分の権利は持分割合に応じて残りの共有者へと移っていきます。他の共有者に持分を「引き取ってもらう」交渉をする必要がなく、放棄した人は共有関係から完全に抜けられる点が特徴です。

ただし、意思表示だけで放棄自体は成立するものの、登記を済ませない限り、その効力を第三者に主張できません。口約束や書面のやり取りだけで満足せず、実際に持分移転登記を完了させて初めて、手続きが終わったといえます。次の章で、具体的な手続きの流れを見ていきましょう。

共有持分放棄の手続きの流れ

共有持分放棄の手続きは「意思表示」「必要書類の準備と共同での登記申請」という2つのステップで進みます。他の共有者の協力が前提になる点が、この後の注意点にもつながる重要なポイントです。

ステップ1. まずは放棄の意思表示を行う

放棄の効力自体は、他の共有者への意思表示だけで法律上生じます。ただし、これを事前に・単独で伝えることは法律上必須の手続きではなく、実際には次の登記申請の中で示す書面(持分放棄証書)が意思表示を兼ねる形で進むケースも少なくありません。

とはいえ、何も伝えないまま手続きを進めると、後になって「勝手に放棄された」と受け取られ、共有者との関係が悪化する原因にもなりかねません。実務では、内容証明郵便などで放棄の意思を明確な形で残しておくと、後々の「言った・言わない」のトラブルを避けやすくなります。

ステップ2. 必要書類をそろえて共同で登記申請する

放棄による持分移転登記は、放棄した人と、持分を新たに取得する共有者が共同で申請するのが原則です。申請にあたっては、主に次のような書類を準備します。

書類備考
登記原因証明情報(持分放棄証書)放棄の事実を証明する書面
印鑑証明書発行後3か月以内のものが一般的
固定資産評価証明書登録免許税の算定に使用
登記識別情報(登記済証)放棄する人が用意

申請書自体の書式は、法務局の窓口やWebサイトで確認できます。共有者が複数いる場合は、持分割合に応じて全員に按分されて帰属します。書類の準備や記載内容に不安がある場合は、司法書士に依頼すると安心です。

つまり、放棄の意思表示自体は自分だけでできても、書類の準備と登記の完了には他の共有者の協力が欠かせません。この点が、次章で解説する注意点にも関わってきます。

ステップ3. 応じない場合は登記引取請求訴訟へ

共有者が「登記に協力するつもりはない」と拒否し続けるケースもあります。話し合いが完全に行き詰まった場合の最終手段が「登記引取請求訴訟」で、放棄した人がこの訴訟を提起して確定判決を得れば、相手の協力を待たずに単独で登記手続きを進められるようになります。

ただし、訴訟に踏み切ると弁護士費用だけで数十万円単位の出費が発生するうえ、判決が確定するまでには相応の時間もかかります。感情的な対立が強い場合ほど長期化しやすいため、話し合いが平行線をたどっている段階で、早めに弁護士や司法書士に相談しておくことをおすすめします。

共有者同士の訴訟に発展した場合の一般的な流れや費用感については、以下の記事で詳しく解説しています。

共有持分放棄にかかる費用

結論から言うと、共有持分放棄では、放棄する本人だけでなく、持分を受け取る他の共有者にもそれぞれ費用や税金の負担が生じます。

費用・税金の項目主な負担者目安
司法書士報酬(登記を依頼する場合)放棄する人数万円程度
登録免許税受け取る共有者(実務上一般的)固定資産税評価額×取得する持分割合×2%程度
贈与税(みなし贈与)受け取る共有者基礎控除(110万円)を超えた分に課税
不動産取得税受け取る共有者評価額に応じて課税されることも
弁護士費用(訴訟に発展した場合)放棄する人数十万円単位

法律上、登録免許税は放棄する人と受け取る共有者の双方が連帯して納める義務を負いますが、実務では新たに持分を取得する側が支払うのが通例です。

たとえば評価額800万円の不動産で3分の1の持分を取得するなら、目安は5万3千円程度になります。贈与税や不動産取得税についても同様に、対価を払わずに持分を得た共有者側が負担する形になります。放棄する本人には対価が入らないだけでなく、相手側にこうした税負担を発生させてしまう可能性がある点は、次の章でさらに詳しく取り上げます。

贈与税・不動産取得税も、対価なく持分を得る共有者側の負担です。放棄する本人が対価を受け取れないだけでなく、こうした形で相手にも税負担が及ぶ可能性がある点は、次章で改めて詳しく解説します。

放棄する本人にとっての主な負担は、司法書士に依頼する場合の報酬や、他の共有者が協力してくれず訴訟に発展した場合の弁護士費用です。共有者の人数や書類の準備状況によって金額は変わるため、複数の事務所に見積もりを確認しておくと安心です。なお、放棄が完了すれば共有者ではなくなるため、翌年度以降の固定資産税を負担する必要はなくなります。

共有持分放棄で知っておきたい注意点

放棄を選ぶ前には、次の4つの注意点を押さえておく必要があります。

  • 早い者勝ちで持分が偏ることがある
  • 受け取った側にみなし贈与税がかかることもある
  • 農地の持分放棄は農地法の確認が必要
  • 私道の持分放棄は他の利用者への配慮も必要

以下で詳細を解説します。

注意点1. 早い者勝ちで持分が偏ることがある

「早い者勝ち」と呼ばれる理由は、放棄するたびに持分が残った共有者へ吸収されていく仕組みにあります。たとえば共有者が4人いるケースでは、一人が放棄すると残り3人で持分を分け合う形になり、さらに一人が放棄すれば残り2人がその分を引き受け、最終的に一人だけが残ればその人がすべての持分を背負うことになります。

ここで注意したいのは、「先に動いた人が得をする」という単純な図式ではなく、「共有者が減るほど、放棄しても引き取り手が見つからなくなる」という点です。共有者同士がほぼ同時期に放棄を検討しているような状況では、後から「聞いていなかった」というトラブルにつながりやすいため、早い段階で情報を共有しておくことが望ましいでしょう。

注意点2. 受け取った側にみなし贈与税がかかることもある

見落とされがちですが、放棄によって持分を取得した他の共有者には、対価なく利益を得たとして「みなし贈与」に該当し、贈与税が課される可能性があります(相続税法9条)。あわせて、不動産取得税がかかる場合もあります。

放棄する本人は対価を得られないだけでなく、こうした税負担を意図せず相手に背負わせてしまう可能性がある、という点は事前にきちんと共有しておきたいところです。実際の税額は不動産の評価額や他の贈与の有無によって変わるため、税理士へ確認することをおすすめします。

出典:国税庁

注意点3. 農地の持分放棄は農地法の確認が必要

放棄する共有持分が農地の場合、農地法上の制限が関わることがあります。権利の移転にあたって許可や届出が必要になるケースもあるため、通常の宅地とは別の手続きが求められる可能性があります。該当する場合は、農業委員会など専門窓口へあらかじめ確認しておきましょう。

注意点4. 私道の持分放棄は他の利用者への配慮も必要

放棄する共有持分が私道の場合は、周辺住民など他の利用者との関係にも注意が必要です。通行や掘削の権利に影響することもあるため、事前に専門家へ相談しておくと安心です。

共有持分の放棄と売却はどちらが得か

ここまで見てきたとおり、共有持分は「放棄」でも「売却」でも、他の共有者の同意なく単独で手放せる点は共通しています。一方で、費用や税金、手続きの面では次のような違いがあります。

比較項目放棄売却
対価受け取れない受け取れる
かかる税金登録免許税(自己負担)/受け取った側にみなし贈与税がかかることも登記関連費用はあるが、対価としての売却代金を受け取れる
他の共有者への影響贈与税などの負担をかける可能性がある通常は課税されない
手続きの手間共有者との共同申請が必要。応じなければ訴訟も買取業者への相談・査定・契約で完結しやすい

放棄は対価を得られないうえに、他の共有者に贈与税の負担をかけてしまう可能性があるのに対し、売却であれば対価を受け取れ、相手に贈与税がかかることも基本的にありません。そのため、経済的には売却の方が有利になるケースが多いといえます。

もちろん、買い手がつきにくい特殊な事情がある場合など、放棄が現実的な選択肢になる場合もあります。次の章では、売却という選択肢についてもう少し詳しく見ていきましょう。

共有持分の放棄に迷ったら売却の検討を

「自分の持分なんて買い手がつかないだろう」と考えて放棄を選ぼうとしている方もいるかもしれませんが、共有持分を専門に扱う買取業者であれば、通常は売却が難しいとされる持分でも買い取れる可能性があります。

持分くんは、共有持分の売却・買取に特化したサービスです。他の共有者との関係や物件の状況に応じたご提案が可能なため、放棄を決める前に、まずは無料査定でいくらになるか確認してみることをおすすめします。査定額を知ったうえで、放棄と売却のどちらを選ぶか判断しても遅くはありません。

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共有持分の放棄に関するよくある質問

ここまで、共有持分放棄の仕組みや手続き、費用、注意点、売却との違いを解説してきました。最後に、読者から寄せられやすい質問にまとめてお答えします。

Q1. 相続放棄と持分放棄はどう違うか

両者の違いは、「何を」「どこに」放棄するかにあります。相続放棄は、プラスの財産だけでなくマイナスの財産(借金)も含めた相続そのものを家庭裁判所に申し立てて放棄する手続きで、原則として相続開始を知った日から3か月以内という期限があります(民法938条)。一方、持分放棄は、すでに取得している共有持分だけを放棄する手続きです(民法255条)。両者は根拠となる法律も手続き先も異なります。

相続に関する共有名義の解消方法を詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

Q2. 放棄の意思表示は撤回できるか

一度有効に成立した放棄の意思表示を、後から一方的に撤回することは基本的に難しいとされています。放棄するかどうかは、実行前に慎重に判断することが大切です。

Q3. 贈与と持分放棄はどう違うか

贈与は、相手を指定して持分を譲る契約行為であり、相手の承諾(受贈の意思)が必要です。これに対して持分放棄は、相手を指定しない単独行為であり、他の共有者の承諾を得なくても成立し、結果的に持分割合に応じて他の共有者へ帰属します。税務上は、どちらのケースでも受け取った側に贈与税が課される可能性がある点は共通しますが、成立のしかたが異なることを押さえておきましょう。

共有持分は放棄より売却の検討を

共有持分の放棄と売却は、どちらも他の共有者の同意なく単独でできる点は共通していますが、対価を受け取れるかどうか、そして手続きにかかる手間の面で大きく異なります。放棄は対価を得られないうえに、他の共有者に贈与税などの負担をかけてしまう可能性がある点は、実行前にしっかり理解しておきたいポイントです。

持分くんは、共有持分の売却・買取に特化したサービスです。放棄を検討している段階からのご相談にも対応していますので、決断する前に一度、無料査定で状況を確認してみてはいかがでしょうか。放棄も売却も、一度手続きを終えると後から取り消すのは難しいからこそ、選ぶ前の比較検討が大切です。

より詳しい売却の流れや相場を知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

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